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すべてはFREEに向かう(回天編)

2010年03月27日

 この一連のシリーズは二つのブログ(「岡田斗司夫のゼネラルプロダクツ」「レコーディングダイエット2.0のススメ」)の交互で進行しています。
 最初から読む場合は、「岡田斗司夫のゼネラルプロダクツ 2010/03/16からスタートしてください。
 
 
 
 twitterを奨めてくれたのは週刊アスキー編集者の矢崎氏だ。彼の薦めでiPhoneまで買ってしまった僕はすっかりtwitterにハマってしまった。140文字という制限は僕らのように原稿表現を生業にしてる身にはかえってやりやすい。
 「言いたいことを、最初に思いついたフレーズにこだわらずに短く言い換える」
 たったそれだけのことだからね。
 
 ハマった僕は新しい遊びを考えた。
 twitter公開読書だ。読んだことのない本を初見で読みながらtwitterで「つぶやく」。余裕があれば自分の感想も書くし、質問にも答える。
 
 面白そうだ。やってみよう。
 題材として選んだのが、本屋で青い表紙が気に入った『FREE』という分厚い本だった。

 さっそく公開読書の企画をブログやtwitterで呼びかけ、僕はぶっつけ本番でつぶやきながら『FREE』を読んだ。
 結論から言うと公開読書は大成功だった。
 なによりすごいと思ったのは、みるみる参加者が「教育」されていくということ。質問を投げ合い、お互いに答え合い、すでに読んだ人が解説し、未見の人は我慢できずにその場でamazonを「ポチッ」として報告する。
 そのダイナミックな知的狂騒状態は、参加した者の「知的姿勢」をあっという間に矯正し、教導する。すなわち「進んでいる者」が「理解しきれない者」に教え、教えることによって自らの理解をさらに深めるのだ。
 twitterというのは教育媒体としても、また集合知としてもこんなに使えるものだったのか!
 
 僕はびっくりし、興奮した。
 だけど同時に落ち込み、大いに悩んでしまったんだ。
 
 『FREE』(NHK出版 クリス・アンダーソン)はいま、経済界を震撼させている怪物本だ。「料金を取らないことでお金を稼ぐ」という同書で書かれたコンセプトは、いままでもあったけれど概念としてまとめて提出されると、驚くべき明日の世界を見せてくれた。
 くわしくは同書をぜひ読んで欲しい。
 とりあえず僕は考え込んでしまった。
 僕が書いている本、その内容は「情報」だ。情報はFREE=無料になりたがる。ここから考えると著作で喰っていくというのは今後、ますます難しくなるだろう。
 もちろん、それでも大ヒット本は登場するだろう。でも大ヒットを出した人しか喰えないような業界は間違っている。
 「1.儲からなくてもやる人」「2.なんとか喰えるからやる人」「3.儲かるからやる人」、以上3種類の人が混在してこそ産業は活性化する。3の人はすでに抜けて、2の人がどんどんいなくなっていく。いま考えている出版という産業は、たぶんあと10年以内に数分の一に縮小するだろう。

 どうすればいい?
 考えたよ。それこそ必死になって。
 自分の書いた本の一部を無料で配布して、残りを売るとか。こないだも書いたように講演やセミナーで喰っていくことも考えた。
 そういえば取材先のライターや編集者が次々と転業・廃業したり、やたらと出版点数を増やそうしてるんだよね。それを聞いたある放送関係者は「まるで沈没船から逃げるネズミですね」と評した。無神経なセリフには怒るよりも「事態はそこまで来てるんだよなぁ」と思ったけど、「お前の業界も3年遅れで同じ波が来るんだぞ」と言い返してやった。
 
 でも、前にも書いたとおり講演やセミナーは「違う」気がする。
 とりあえず2009年末の僕は、もう本当にひたすら考え、悩んでいた。

 そんな時、以前から企画が進んでいた小飼弾さんとの対談話が急に具体化した。
 単行本化を前提にして、二人でなんでも話し合ってライターの方にまとめて貰う。
 2010年の1月26日(火)、僕の事務所で対談の第一回目は楽しく終わった。
「今度はぜひ、小飼さんの部屋でやろう!」と約束した。

 2月14日(日)、大阪で「ひとり夜話」のトークイベント。その夜、僕は「これからのひとり夜話の方向性を考えている。もっと参加者の負担にならない方法を模索している」と話した。
 正直に言おう。僕はその夜、明確なプランは持っていなかった。
 「ひとり夜話」の収録DVDを1枚2000円ぐらいで売ろうかな、とか考えていただけだ。または会員登録したら1000円程度でダウンロードできるとか。
 それでもとりあえず、毎月スケジュールを合わせて新宿や難波に来るよりは参加者の負担はずっと減るに違いない。その程度の未来を考えていた。
 
 でもね、やっぱり不安だったよ。
 これが「FREE」の回答なのかって。
 こんな普通の、ファンクラブや有料セミナーもどきのアイデアで新時代へ行けるんだろうか?
 
 普段、人に相談などしない性格の僕も、その頃はとことん弱気になっていた。
 おまけに、目の前にはとんでもなく頭が良い成功者がいるではないか。
 2月16日(火)の夜、東京のど真ん中、超高層マンションの最上階ペントハウスにある小飼邸からは、どこまでも美しい東京の夜景が広がっていた。
 対談は無事に終わり、僕は思いきって「小飼さん、ちょっと僕の相談にのっていただけませんか?」と切り出した。
 
 小飼弾氏は笑顔で僕の話を聞いてくれた。
 相談というのは、話を聞いて貰えば9割終わっている、というのが僕の持論だ。
 今回の相談にしても、僕は何度も自分のノートにまとめていた。僕の持論からすれば、すでに回答はその中に隠れているはずだ。
 しかし「自分の都合のいい回答」のみを求める僕は悩みの迷路に迷い込み、小飼氏からなんでもいい、ご託宣をいただこうとしていた。
 
 おねがい、ダン。教えて!
 どうすれば僕も、こんなカッチョいいマンションの最上階でお金に悩まずに暮らせるの?
 
 しかし小飼氏に説明しようと話す僕の口調は、どんどん愚痴っぽくなってしまった。
「会員制のサイトを自分でやろうとチャレンジしたけど、よくわからない」
「ひとりテレビのネット配信、よくわからない」
「若い人が自分よりずっと気楽に上手く映像配信などやってると、劣等感で自分に腹が立つ」

 小飼さんは「僕もそういう映像系の会員サイトを運営したことはないからよくわからないけど」と前置きして、こう答えた。

「岡田さん、それ誰かにやらせたら?」
「え?」
「岡田さんのやろうとしてることは『ビジネス』でしょ?ビジネスの定義は『自分でやらずに人にやらせる』ですよ」
「つまり、どっかに発注しろ、という意味ですか?」
「いや、そんなの関係ない。『誰か』にやらせるんですよ」

 小飼氏のサジェスチョンは明快だった。それまでの僕は「どうやって?」だけを考えて、全部自分がすることばかり考えていた。
 そうではなくて「誰が?」だけを考える。「どうやって?」は任されたそいつが考えればいい。
 
「でも、誰にやらせるんですか?」
「呼びかけて集めれば、タダ働きする奴はいますよ。岡田斗司夫ですよ。大丈夫」
「いや、そんなの無理ですよ!」
「昔、SF大会でやってたじゃないですか。きっといっぱい集まりますよ。弟子を取ると思えばいいんです。タダ働きどころか、弟子なんだから月謝を取ってもいい」」

 小飼氏は楽しそうに「弾言」した。
 丸め込まれたような気分で、僕は納得してしまった。
 
 いや。
 しかし。
 やっぱりダメだ。
 でも。
 ひょっとすると。
 違う!
 待てよ。
 
 帰りの地下鉄で僕の頭の中はぐるぐる回転した。
 よくわからないけど、ここに解答がある気がした。
 
 事務所に帰っても、頭の回転は止まらない。
「人にやらせることが『ビジネス』の定義」
「弟子なんだから月謝取ってもいい」
「SF大会と同じ」

 小飼氏の言葉を中心に、いろんな考えやアイデアのツリー構造が集まって結合する。
 しかしその結合は脆く、少しの矛盾であっというまに空中分解し、また新しい結束点を探し出す。
 
 仮説。
 仮定。
 問いかけ。
 自信。
 不安。

 まず、いままで悩んでいた事や「やるべき」と思いこんでいた事を思考停止する。「頭の棚」にしまって見ないようにする。
 フラットに考えてみよう。
 果たして僕はなにを望んでいるのか?
 どうすれば満足するのか?
 
 小飼さんのペントハウスのような生活か?
 大ヒット作家のように「新作を待ち望み、買い漁ってくれるようなファン」が大量に欲しいのか?
 
 ああそうだよ。もちろん欲しいとも。
 でもそれだけか?よく考えろ。
 思い出せ。
 マイケル・ジャクソンのことを。

 そう、マイケル・ジャクソンを思い出せ。
 忘れたのか?
「人類の苦痛の0.3%を削減する」
 著作も活動も、すべてその目標にあるはずなのに。
 人より自由な生き方も、気楽に見える人生も、すべて「その報酬」の前払いにすぎない。
 なのに、僕はいつのまに自分の目的を見失って「生きていく」「喰っていく」ことだけ考える奴になっちゃったんだろう。
 
 ああ、そうだ。
 ガイナックスをやめたとき、「もう二度と誰かと仕事するのはやめよう」と思ったよ。
 別に誰かに裏切られたわけじゃない。
 でも、やっぱり「ひとりが気楽だ」と思ったのは本当だ。
 
 でも、その後も会社を作ったし、共同プロジェクトもやった。
 柳瀬君たちとオタキングを運営し、海洋堂と食玩を作った。
 けっきょく、仕事というのは「誰かと」するものなんだよな。
 
 人間不信。
 使命感。
 整合性。
 原点確認。
 事例調査。
 分類→仮説→検証→仮定→外挿→実験方法→思考実験。

 
 こう言う時、考えるのを止めてはいけない。脳内の沸点を下げてはダメだ。
 まだ冷却凝固させなくてもいい。さらなる化学反応を起こすには、「落としどころ」すなわち結論を探してはいけない。
 
 考えろ。
 疑え。
 思い出せ。
 信じろ。
 もっと思考を、もっと論理を。
 信念に頼るな。自分を思い出して「絶対にできること」だけで構造を作れ。
 自分の決心を信じるな。自分の行動のみを根拠にしろ。
 考えろ。
 脳内温度を下げるな。
 もっと熱量を!
 
 考えれば考えるほどアイデアが沸いてきた。
 深夜、ノートに向かいながら僕は愉快でしかたなかった。
 自分で書いた文字に、単語に、文章に自分で惚れることができる。
 
 論理は、とてつもない長い旅を終えた論理は、最後にやっと感情にたどり着いた。
 
 できる。
 やれる。
 やりたい!
 僕はこの仕事がやりたい!!
 
 こんな楽しいのはいったい何年ぶりだろう。
 いつの間にか僕は、声を出して笑いながらノートを書いていた。
  
 
 今日はここまで。
 明日は日曜だからブログはお休み。
 続きは月曜に「レコーディング・ダイエット2.0のススメ」で。
 
 
 そう。すべてはFREEの世界へ向かっているんだ。
 オタキングex、あと六日ではじまります。

 今日のBGMは「アンパンマンマーチ」だよ。





Posted by 岡田斗司夫 at 15:02

この記事へのコメント

忘れないで夢を こぼさないで涙 だから君は行くんだどこまでも
ヽ(*´▽`*ヽ)♪
Posted by ちびうさまきこ at 2010年03月27日 16:08
twitter ID asianmajorです。
御身体、ご自愛ください。
次回が待ちきれません。
実は私の妻も10年以上あるサイトを運営しています。
ニッチな世界のための小さなサイトですが『必要とする人にはとても必要な』サイトとして知られております。しかし、全くお金にならず収支はとんとん、或いは持ち出しで運営しています。
過去、サイトの有料会員制或いは岡田さんがかなが得られたようなセミナーなどでなんとか費用の捻出を試みましたがどのアイデアも『情報はフリー』という壁を越えられないまま10年以上が経ちました。
それ故、『情報はフリーに向かう』というお考えは十分すぎるほど理解できます。
そのため『フリー』が出版された際には何かヒントがないかと貪るように呼んだ次第です。
今回の岡田さんの話は先日も書きましたように『働くということ』の再認識と、今後の情報ビジネスの方向性を知るために読ませていただいてます。
次回もPCの前でお待ちしております。
Posted by カジモド at 2010年03月27日 16:14
うはーファンクラブ!

私は音楽やスポーツ関係のファンクラブの、運営や立ち上げにいくつも係わってきた、ある意味ファンクラブのプロです。
その私が、もう10年以上前、初めてネットの世界に入ったとき、これはファンクラブに取って代わるな、と感じました。

私にとってファンクラブとは、マスコミとミニコミのちょうど真ん中にある、中くらいのサイズのメディア、でしたから。

実際、それまで運営に携わっていたファンクラブ組織は、ネットへの移行により自然消滅的になくなっていきました。

でも、ある意味完全に閉じた空間である既存のファンクラブと、ネットのコミュニティは違う。
ネットは、閉じているけど開いているし、開いているけど閉じている。
そこでは会員1人1人の立ち位置も、ファンするものとされるものとの関係も、やっぱり少し違う。

「教育」と「淘汰」。
既存のファンクラブでは難しくて、ネットなら結構できそうだと私が思うことを、岡田さんも提示してくれてる。

すっごーい、こっちの方向でOK?
早く続きが読みたいです。
Posted by YumitaChigumi at 2010年03月27日 16:31
諸事情あり、久々に拝見する事ができました。知らぬ間に色々な事が起こっていて驚いてます。
今まで岡田さんのおかげで助けられた事が沢山あります。ですが、私は岡田さん手助けする事はできないと思っていました。というより、岡田さんは自分ひとりで解決してしまう人だと思っていました。
私に出来ることは本を買ったりイベントに行ったりする事だけで、むしろ自分のための事ばかりです。微力ながら岡田さんの手助けが出来ることがないかと考えようと思いました。
Posted by Y at 2010年03月27日 16:36
おおー面白いです、岡田さん!
今の岡田さん輝いてます!
創作活動しないと、論理追求してかないと
生きてけないような自分にとって
今の岡田さんはHUNTER×HUNTERの
最終話くらい気になりますw
出来る限り尽力させていただきます。
Posted by aroerinan at 2010年03月27日 17:59
今後の話について行くためにいっぱい勉強しなきゃ!って感じです。
でもめちゃくちゃワクワクします。
何かサポートできるようになりたい!

アンパンマンマーチ、かっこよすぎですね(^^
Posted by マルムギ at 2010年03月27日 18:42
今回の文章を見ていて、「面白い!」だけでなく
物凄く興奮してしまいます。

岡田さんが最近ツィッターとかで色々新しい試みをやっているなとは、思っていたのですが
なるほど、こういう事を色々考えて試していたのですね。
Y atさんが書かれていますが、自分も岡田さんはひとりですべて解する人だと思い、
遠くで眺めているだけの存在でした。
でもこういう事なら、少しだけでもお手伝いができるかもしれない、と自分も考える事ができます。

YumitaChigumi さん の書かれている ファンクラブの事を見ていて、
こういう人の集まる流れって、同人即売会とかの
動きに似ているなって思いました。
ファンクラブから始まり、イベントをやって
好きなものの為に、時には有償で 時には無償で行動する。
まぁでも、これって 人間社会の当たり前の流れですが。
ただ一般的には、衣食住などの絶対必要な為のものを得る為の共同体だけど
これは次の段階の欲望、知的欲求や好奇心の為の 思考(嗜好)性が一致した人種の共同体ですよね。
Posted by ひげだるま at 2010年03月27日 18:48
うわー、ダイエット本で初めて岡田先生に出会った私には、びっくりすることばかりです!
これから何が起きるのでしょう。楽しみ!
Posted by 転々 at 2010年03月27日 20:10
なんかすごく勉強になります
胸のつかえが取れたような気がします

正直ちょっと前から岡田さんが言ってた
「社員」てのがなんなのか理解出来てなかったので

僕が何か手伝える事があるかどうか分かりませんが
なにかこの流れの中に身を置けたら、と思います

たぶんまだ全部は理解出来てナイとは思うのですが
Posted by 大魔王大魔王 at 2010年03月27日 21:38
アンパンマンマーチ聞きながら、泣きました……。
いやまさか、自分でも泣けるとは思わなかったんですが、感動が止まらない。

でも「助走」「離陸」「上昇」「巡航」と来て、次は「再加速」かと思ったら「回天」でしたか〜。
内容を読んで納得しましたが、次回のタイトルはどうなるのでしょう?
「銀英伝」なら「回天篇」の次は「落日篇」ですが、まさかそうはならないでしょう(笑)
「飛翔篇」か「怒濤篇」がいいです。
続きが待ち遠しいです!!
Posted by 月ノヒカリ at 2010年03月27日 23:48
「何が君の幸せ ? 何をして喜ぶ ? わからないまま終わる。 そんなのは嫌だ !」

ってメッチャ深い歌詞だと思ってました (´▽`)

次回のブログが待ち遠しいです (o‘∀‘o)
Posted by 斉藤 at 2010年03月28日 01:18
たまたま「ぼくたちの洗脳社会」を拝読したところです。御自身がお持ちの「イメージキャピタル」にお気づきにならず、小飼弾氏に助言を受けるなんて面白い。自分を俯瞰して見ることって難しいんですよね。私も、第三者に指摘を受けてハッと気付くことが多いもので。
Posted by T at 2010年03月28日 12:45
儲け半分、還元半分ですね。あくまで、庶民感覚、世の中の流れを見据えれば、必然とわかるものですね!
Posted by えり子 at 2010年03月28日 21:02
どうしても「人類の苦痛の0,3%を削減」したいのでしたら、もう一度庵野秀明監督とアニメを作るのが一番良いと思うのですが・・・。
無能なコメントですみません。
Posted by 守人 at 2010年03月28日 21:44
『驚愕』!・・。守人さんですか?偶然ですが、家人と同じ、めずらしいお名前ですね!
Posted by えり子 at 2010年03月29日 03:13
もし長島☆自演乙☆雄一郎が
K-1賞金持参でexに入社志願で来たら‥
Posted by 旅行者 at 2010年03月29日 20:53