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「ミッキーマウス問題」、回答編

2010年01月13日

 先月の日記で書いた「ミッキーマウス問題」の回答編だよ。

 まず、問題の確認からね。
 昨年末、コンビニや書店で発売になった「プレジデント」2010.1.18号の特集で、いろんな知識人が難問・奇問に答える大特集をやっている。
「カツマ教信者の女上司とどう付き合うべきか?」
「パスポートを20分で発行してもらう裏技とは?」
 などの100近い難問の中で、僕に割り振られたのは「お客に『ミッキーマウスの存在』を信じさせるには?」という超難問。
 ディズニー社からの依頼ではないけど、そのつもりで考えてくれ、というのが注文だ。

 当たり前だけど、この問題には正解はない。その意味ではフェルミ推論っぽい問題とも言える。
 そこでみなさんにも問題です。せっかくだから同じ条件で考えてみない?

「お客に『ミッキーマウスの存在』を信じさせるには?」

 前提条件は以下の三つ。
①トンチや「お笑い」は無し。「ミッキーを信じないと殺す」と脅すとか、実現不可能な回答はなし。
②相談相手の利益優先。この場合、ディズニー社に実現可能で、利益のある方法を考えること。
③制限時間は3時間。

 さらにプロ級チャレンジとして、僕の受けた追加二条件は以下の通り。
 やる気ある人はこっちにもチャレンジしてね。

④2000文字以内、つまり1950文字~2000文字で書く。多くても少なくてもダメ。この範囲内で「え?」「ふむふむ」「それで?」「なるほど!」という起承転結を展開する。
⑤プレジデントという雑誌の購買層、つまり30代後半~50代の男性をターゲットに書く。彼らが「この方法なら、ミッキーを信じる人が増えるだろう」と判断できる根拠と、面白く読み進められる誘導ラインを作る。

 10行下から、回答編がはじまります!









 では回答です。
 僕の出した答は、以下のとおり。
 ブログ画面で読みやすいように改行を増やした以外は、掲載文そのままです。


*********回答編スタート**********
 難問ですね。
 僕はディズニーランドのリピーターです。ランドもシーも大好きで、わざわざランドでお昼食べにだけ行くのもしょっちゅうでした。
 その僕ですら「ミッキーの実在」は信じてません。

 混乱を避けるため、「信じる」をレベル分けして話を進めます。
 信じる①は「実在を信じる」、つまり「あんな巨大な、人語を話すネズミ状の生物がいる」と信じることです。
 これは無理。ランド入り口に進化系統樹を張り出さなきゃいけなくなる。齧歯類を祖先にして、数千年前にカピバラより巨大化がはじまって二足歩行して、という不気味な図解を舞浜駅に張るのはオススメできません。

 信じる②は「概念を信じる」。
 愛や親子の絆を信じるのと同じです。物理的に存在しないけど「ある」と皆が信じている。

 信じる③は「夢があるから信じたい」。
 サンタやお正月の初詣、厄除けもここに入ります。

 信じる④は「信じてるフリをする」。大仏にお参りとかです。
 大仏をお参りする人は普段から仏教を信じてるのではなく、「せっかくお参りに来たから」という期間や場所限定、観光気分で「とりあえず」信じたフリを楽しみます。

 現在のミッキーに関しては、残念ながら④です。だから楽しかったディズニーランドを離れると、みんな恥ずかしそうにミニーの耳を外すわけです。
 ①は絶対に無理。②も難しい。
 となるとねらい目は③です。せめてサンタクロースと同じくらいには信じさせるにはどうするか?

 これより解決法に入ります。
 いま、ミッキーを信じようと思ったら、わざわざディズニーランドに入るしかありません。
 面白いことに、渋谷のディズニーショップでは信心が発生してこない。「本物」の近くにいかないとダメだからです。
 そう、ディズニーランドに「本物」がいるのが③以上の信心発生のネックになってるんですよ。

 信じる②や③は概念です。舞浜の遊園地にいる着ぐるみを「本物」だと言い張るのは①の行為です。
 でもそれは不可能。あんな生物がいるはずがないから。

 ①をはっきりあきらめない限り、絶対に②や③の高みにはたどり着きません。
 ミッキーをいま以上に信じさせるためには、逆説的でもあえて「このミッキーは着ぐるみです」と認めるしかないんです。
 
 ミッキーはディズニーが想像した夢のシンボルです。だから世界最高のアクターが入っています。ではミッキーの正体は中身のアクターでしょうか?着ぐるみでしょうか?

 いいえ、違います。

 大勢のスタッフが作り上げたミッキーの衣装を、最高のアクターが最高のレッスンの果てに選ばれて着込む。それだけでは、まだミッキーではありません。
 ミッキーがステージに上がる。
 パレードで手を振る。
 みなさんが手を振りかえして「ミッキー!」と叫ぶ。

 この瞬間、ミッキーは存在します。夢と想像の象徴として、この世界にミッキーマウスは降臨するのです。
 ミッキーマウスは、ディズニーが想像し、私たちスタッフが支え、みなさんが手を振ってくれたその瞬間だけこの世に存在できる奇跡、『夢の象徴』なんです。

 ここまで言い切らないとダメでしょう。このロジックなら③はOK、上手くすると②の「愛」と同レベルまで持っていけます。
 ミッキーではなく、「ミッキーを信じる自分の純粋さ」ならみんな喜んで信じてくれます。
 信じることにそれぞれ利益があるから。気持ちがいいからです。

 まずお客様の利益・気持ちを第一に。ディズニー社百年の計はここからではないでしょうか。
 
***********回答編おわり***********

 君の考えた回答はどうだったかな?
 僕自身の反省としては、行間から「どや顔」が見えるのがお恥ずかしい限り。
 でも制限のある誌面で、他の回答者もズラッと並ぶんだからこれぐらい言い切らないと「商品」になりにくいんだ。
 ま、3時間にしては頑張ったと満足してるので、見逃してね(笑)
 
 
 今日はここまで。
 じゃ、また明日ね。



Posted by 岡田斗司夫 at 23:14

この記事へのコメント

ソクラテスの人事などの回答はすごいと思っていましたが、この問題に関する回答はがっかりです。
勝手に問題をすり替えた上に、易しくした問題にも十分な回答になっていない。もし③と信じさせるためには信じるための動機が必要ですが、どうやって動機を与えるか示されていない。それに着ぐるみだとオリエンタルランドが認めるとは思えない。
完全な回答でなくていいと思うのでなぜ①に取り組まなかったのか残念です。そもそもミッキーマウスが"生物"というのが固定観念じゃないでしょうか。
人はなぜその実在を信じるのか?その仕組みなのか、歴史なのか、そうした分析から考察するという方法もあった。
Posted by tama at 2010年01月14日 03:47
 ミッキーマウスの存在をハイデガー的な議論で解き明していたのには、驚きました。自分だったらこの発想は出てきません!
 ところで、一つ気になったのは、この方法でお客さんに信じてもらうためには、あらゆるお客さんにもっと「存在するってどういうことか」という話を理解してもらわないといけないのではないでしょうか。(このhow toが見たかったです) そうすれば、お客さんが「ミッキーに存在を与えているのは私たち」という事を、もっとスムースに自覚できるのではないかと思います。
Posted by はるじゅ at 2010年01月14日 16:43
『「お客」に「存在」を信じさせる』という問題であって、『「人」に「実在」を信じさせる』ではないですよね。
で、サンタ等と同じ信じられ方なら、すでに達成されているのでは?
サンタ等を信じないような「夢のないお客」は諦めるしかない?(笑)
やはり「ランドでしか会えない」のが致命的ですねぇ。
食い倒れ太郎のように、あちこち出向いて営業させましょう。
Posted by まさ吉 at 2010年01月14日 21:44
 これは「問題」なので、回答に対する文句や注文は受け付けません(笑)
 もし「ここが不満」「こうすればもっといい」という意見があれば、2000字で自分の回答例を書くこと。でないと頭の訓練にはならないよ。
Posted by 岡田斗司夫岡田斗司夫 at 2010年01月14日 23:00
問題のスケールが大きいので,
・ミッキーを人間が知覚できる存在として信じさせる
・ミッキーを人間が知覚できない存在として信じさせる
の2パターンに分けて考えてみる.

まず前者の場合,
・ミッキーは直接的に知覚できる(直に触れられる,とか)
・ミッキーは間接的にしか知覚できない(テレビでしか見れない,とか)
の2通りのアプローチにさらに分けられる.

直接知覚できる存在としてミッキーを信させるには,ミッキーが動くキャラである以上,ディズニーランド内を動き回る着ぐるみをミッキーと信じさせるのが現実的な手である.ただし,この方法は子供にしか通用しないし,もう既に行われている.

続いて,ミッキーが間接的に知覚できるという条件のアプローチを考える.ここでアプローチを
・権威的な存在のお墨付きをいただく(親,科学書,聖書,法律とか)
・特にお墨付きをもらわない
の2つに分けて考える.

前者をまず考えてみる.
親の協力のもとであればサンタのようにミッキーを子供に信じさせることは可能である.この場合,短期的にはクリスマスのような日を新しく浸透させるべく宣伝し,長期的に子供が真相に気付くのを最大限に遅延させるのがディズニーの目的となる.つまり,長期的に超ゆとり教育を世界規模に広めればよい.
次に科学で信じさせる方法であるが,ミッキーの現在の設定を変えない限りは無理だろう.あんなネズミがいたら歴史的な大発見だ.
聖書によって信じさせるには,既存の世界的な宗教のボスに「ミッキーは実在する」と言わせる.もしくは新しく宗教をつくってミッキーの存在を教義として広める.といったものがある.ただし,これらを実行するには長期的な計画になる.
法律のよって信じさせるには,小国を買収して徐々に大国にする計画を立てることになる.これも長期的な計画となる.

続いて後者の,知覚できるが権威によってお墨付きをもらわないままミッキーを信じさせる方法を考えてみる.
この場合,
・本能に刷り込む
・損得勘定によって経験的に学習させる
の2つの方法がある.

前者は,ミッキーと擬似恋愛関係を結ぶようにすればいい.ミッキーは男なので,例えばミッキーが超イケメン的な展開をする日常系のアニメをつくれば惚れる女性が現れる.そうすれば理想の恋愛相手としてミッキーを信じるようになる.
後者は,日本の祝い事行事みたく,ミッキーの存在を仮定して祈りを捧げるようなイベントを一年に複数回つくり,その日はお祭り騒ぎする日だと宣伝すればよい.信じないよりも信じる方がみんなと騒げて楽しいので,とりあえず信じてみるといった人が現れる.
これらの方法は比較的短期の計画で実行できる.
以上が知覚できる存在として信じさせる方法である.

続いて知覚できないものとしてミッキーを信じさせる方法について考えてみる.この場合,知覚できる場合の方法から,絵や音が無くしても可能なものを実行すればよい.ただし,ミッキーとしてはせっかく愛くるしい造形があるので,それを消すよりもそれを利用する方が普及しやすいだろう.

以上を総括すると
短期的には親の協力をもとにして,クリスマスのようなミッキー記念日をつくり関連商品で稼ぐ.
中期的にはミッキーのイケメンアニメをシリーズ化して,ミッキーに祈りを捧げるイベントも続々と新しくリリースして稼ぐ.
長期的には宗教的な神様へと遷移させてお布施で稼ぐ.
といったところが妥当だろう.

どうでしょうか,岡田さん.
Posted by あじすあべば at 2010年01月15日 08:49
>あじすあべばさん
 エクセレント!あとは掲載誌にあわせて文章をもっと柔らかくすれば問題なし。
Posted by 岡田斗司夫岡田斗司夫 at 2010年01月15日 09:55
「ミッキーマウスのいない世界」を設定しましょう。
ある日すべての媒体とランド内からミッキーの姿が消えます。
ランド内のあの耳のアイコンも、文字もすべて隠し、スタッフに聞いても「さあ・・・」などと話をそらせるのです。

(存在を信じる要素が100%に到達していないのが現状なので、一旦物理存在としてのミッキーをゼロにすることです。)
逆説としてなぜミッキーはいなくなったのか?と言うことになり、その存在に意味が付与されはじめます。
その間「株主優待ラウンジでミッキーを見た」「地下スペースを運ばれてゆく大量のミッキーを見た」などの情報が流れるとなお良いでしょう。

数週間(ひと月は引っ張らない)でミッキーはなんの予告もなく復活します。
今までにもあったような(黒目→白目ができるなど)極端なデザイン変更ではない程度の若干の違和感をミッキー自体のデザインに付与しておきます。
新しいミッキーは若干のリニューアルを施され、より親しみやすいデザインに改良されることが望ましいですが、変更前のミッキーのデザインはすべて廃棄、ネット上の画像は消去すること、比較するには新たなミッキー商品を買って家に持ち帰るしかないようにしてください。(D社の増益)
ミッキーのCI変更と、その空白のタイムラグについては何も語られません。
(ディズニー社にとってはその姿勢が問われるでしょうが「利益のある方法」がテーゼでありミッキー自体のイメージダウンにはならないので、ここではその点について問題にしません。)

結果、旧デザインのミッキーはどうなったんだ?。
あれはどういう理由で消えたのだ?と言うことになり、新CIとの交代で消えた旧ミッキーが「不在の存在感」を得ることになるのです。
継続して展開されるキャラクター像に意図的に挟み込まれるミッシング・リンク。
(宗教の「手法を使う」のではなく、キリストの復活と敷衍という物語アーキタイプの展開とお考えください。)

「私の知ってるミッキーはこんなんじゃない(親)」
「じゃあパパの知ってるミッキーって?(子)」
世代間闘争が開始される前に家族で交わされる、親の生育歴語りの蜜月。
そこで語られるミッキーはもうどこにもいませんが、確実に「いた」事が語られます。世代継承ごとに行われるマイナーチェンジを、それぞれの個人史にからませること・・・そこには「自分が知っていたあのミッキー」が顧客の数だけ発生します。次世代のD社顧客育成のためには、親の口から語るミッキーの思い出をお勧めします。
Posted by hmn at 2010年01月16日 00:46
遅れまして、、、、

ボーカロイドの初音ミクは、話題ですが、

そろそろ、ミッキーの人格・魂!が存在することを信じこませることは可能でしょう。

NSAのスパコンをつかっつて、人工知能により、ミッキーの人格を作ったことにして、

企業が行う社会貢献活動、阪神・淡路大震災や途上国への義援金などは、
全てミッキーが判断した事として、送金やらメッセージを送る事が出来ます。

また、こんな感じで、ミッキー・プログを作り、宣伝したいグッズや映画なんかも売り込めます。

朝日新聞の人生相談の回答もミッキーが担当できます。

ミッキーの問題点は、設定が古すぎて、今との接点が希薄な事だと思います。

ミッキーは、漬物がすきなのか?とか、京都がすきかとか、サッカーは?、

そのことで、より、身近にミッキーの事を感じ、ファンと強固なミッキー像を作って行く事ができます。

岡田さんは、SFファンなんで、その系で来る!と確信していたのですが...

そう、朝日のゴミに夢を見ている老人の話は、ちょっと関心したんですが...
Posted by ユキカゼ艦長 at 2010年01月17日 19:43